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映画コラム「事故と過失」

txt.赤田りんたろう
(たぶん「GON!」発表時期不明)

 免許センターから免許更新のお知らせが来た。免許更新は普通に無事故無違反の人の場合、簡単な手続きで短時間に終了する。
 だが私のように「埼玉統一警察上等喧嘩御免なさい許してくださいもうしません」を掲げるロードウォリァーズな人の場合、約2時間の講習と称する罰を受け、映画を見なければならない。
 この講習で上映される映画って奴は、唯々交通事故の悲惨さを強調し、安全運転を啓蒙するだけの、警察及び東京都公安委員会による人民の洗脳を目的とした映画であり、間違っても「狂い咲きサンダーロード」のような血沸き肉踊る映画では無い。
 今回紹介するのは「事故と過失・十字架を背負う家族」と題された作品。東映実録路線調のナレーションで物語の幕はあく。「心を込めてハンドルを握らなければ、事故は突然やってくる。そう、前触れもなく…」
 あらすじ。山口悟(35)は自分の誕生日に田代裕一という母子家庭を支える若者の工員をバイクごと跳ねてしまう。大した事ないと思われた田代裕一だが実は大した事で植物人間になってしまう。その際、見舞いに来た山口悟の誠意が足りないとして、田代裕一の叔父は「山口さん、私はあんたと徹底的にやりますよ!」などと凄み、裁判で争う事に。一方山口悟の妻は子供を連れて実家に帰り「離婚する」と言い出す。山口悟は会社を辞め、家を売り、1億6千万円の借金だけが残る。そして「君達が居れば挫けずやっていける」と山口悟が妻にやり直しを訴えると、「もう少し考えさせて下さい」と曖昧に濁されるという、声もない苦い終幕。
 講師のジイさんが「現実なら、この後、復縁する事はまず有り得ないネ」とダメ押しして講習は終わった。講習手数料3900円也。このロングラン作品、恐らく興業収入ではタイタニックを超えていよう。
 私がその帰り道、「山口悟(35)のその後」について思いを馳せつつも、アクセル全開バリバリ!世・露・死・苦!だったのは言うまでもない。

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