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妹萌えの正体

txt.赤田りんたろう
(ミリオン出版「GON!」2002年2月号
特集「妹しかみえない…」巻頭グラビア記事)

 『妹萌え』とは、妹と近親相姦したいというのとは根本的に違うらしい。
「ぼ、僕が妹に萌える理由ですか?それは一言では語り尽くせませんなあ」
 ゆさゆさと身体を揺らしつつ着古したMA−1を脱ぎ、埼玉のお兄ちゃま氏(25歳・仮名・一人っ子)はムフムフと語り始めた。
 萌えって、結局、妹とセックスしたいってことですか?
「ちがいますよ!それは大いなる誤解だなあ!これだから萌えが分からない人は…。つまりですな、萌えというのはセックスではないんです。セックスは勃起でしょ?萌えは勃起しないんです!(熱弁&大声)」
 ここは池袋のサンマルクカフェ。時間は午後2時である。顔を赤らめて私は俯いた。
「萌えっていうのは、こう、切なくて、泣けてきそうなくらいかわいくて、愛しいんですよ。カスミンのスクール水着とか見れば、なんとなくわかるでしょ?」
 わからん。カスミンってなんだ?と、思ったが、調子をあわせて大きくうなずいてみた。
「あれで勃起するようなぺドフィリアの感情とは全然違うんですよ。萌えっていうのは、ピュアで、弱くて、健気で、儚げなものに対して抱く感情なんですよ!」
 つまり、そういうものをレイプとかしてメチャクチャにしたいという欲求なんですね?
「だ・か・ら!そうじゃなくてですねえ(ため息)。例えば、妹ってバカじゃないですか。でもそれがかわいいじゃないですか。そんで、ドジで怒るとムキになって、でも泣いちゃったり、『もーう、お兄ちゃん!』とか言ってホッペふくらませたり、『おいてくぞ』とか言うと、『あーん、待ってよお』なんつって一生懸命追いかけてきたりするじゃないですか!結局お兄ちゃんのことが一番好きなわけじゃないですか!(注・念のためにもう一度記しますが、この人は一人っ子です)だから、そういう可愛くて弱くて、自分を慕ってくるモノを守ってあげたいんですよ!妹ってのは兄に守られるものなんですよ!」
 …あー、つまり、そういう風に守って大事にしているものを自ら犯してデストローイしたいという衝動なんスかね?
「そうじゃねえって!」
 だって、妹モノって結局妹をヤルじゃないですか。
「ああ…。うーん、…でも、そういうときって、むしろ妹のほうの立場で見ているような気もするかな…」
 はあ?
「いや、(急に声を落として)つまり妹のような可愛いものになりたいっていうか…。ほら、僕みたいなマッチョな思想の人間は(注・この人は筋肉のかけらもないデブですが)反面、弱いものに癒されるというか、あ、いやいや、その、つまり、妹とヤリたい、というより、むしろ妹になってヤられたいというか…。いや、つまり、僕は妹になりたいんですよ、きっと。可愛い妹になって、かつ、兄である自分に守られたいというか…」
 私の所見では、つまり、この「萌え」という感情は、自己憐憫(ナルシズム)の一種であり、その中でも「妹萌え」とは、妹(実在しない・あるいは幻想の)に可愛くありたい自己を投影し、その可愛い自己をマッチョな自己が自ら守るという、ややこしいオナニーの形態といえよう。まあ、それが共通認識として文学にまで高まっているのだから、高尚な精神活動と言えば言えなくもないのだが…。
「で、僕のお気に入りの妹は、やっぱ四葉ちゃんですね。チェキ!みたいな。うひひひ…」
 埼玉のお兄ちゃま氏(一人っ子)の妹談義は尽きない。

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